TOP 日日是自然 vol.3
自然とともに生きることの豊かさは、
昔から人々の暮らしの中に息づいてきました。
けれども忙しい日々の中で、その小さな幸せや感動を
見過ごしてしまいがちです。
人生にはどんな日にも意味があり、自然とともにある
暮らしにこそ幸せの種があります。
『日日是自然』は、四季折々の恵みや先人の知恵、
心と体を整える暮らしのヒントを通じて、
日常に自然を取り戻すきっかけになればと願っています。
小さな気づきが、大きなやすらぎにつながりますように。

 あれはいったい、何だったのだろうと思い返す春がある。コロナ禍の始まり、2020年の春。我が家では長男が大学に、次男が高校に入学する年だった。

 人生のどのタイミングにあの災いを経験したかによって、受けた影響の大きさは違うだろう。我が家の場合、何より子どもたちが気の毒だった。長男は親元を離れ、一人暮らしを始め、大学生活を心待ちにしていたのに、人との触れ合いを制限された。オンライン授業は結果的に2年間続き、再開を願っていた柔道も叶わなかった。

 次男は入学式の翌日から2ヶ月間の休校。6月にようやく登校した時には、バスケットボール部の3年生が顔を合わせることもないまま引退していた。校歌の「発声」をしたのは3年生になってからで、歌詞がわからないまま卒業式を迎えた。

 子どもにとっての数年は大人の数倍長く、濃く感じられるものだ。芽吹いたばかりの若葉が、強い風にさらされるような期間だったように思う。あれ以来、今でもマスクを外せずにいる子どもたち(大人たち)がいる。心身の成長期に失われた数年がある子たちへの配慮を忘れてはならないと思う。

 そんな長男は大学院を修了し、この春から社会人。次男は大学4年生になる。

 節分の頃に毎年咲くはずのお隣の梅の木は、今年は半月ほど早く花をつけた。一方で、実家の梅は例年通り、私の誕生日(節分の翌日の立春)に見頃を迎えたと連絡が来た。この春の桜はどうなるのだろう。気候変動が心配されながらも、毎年咲いてくれる春の花が愛しい。

 いつもと変わらない春、いつもと違う春、いくつもの春を迎えてきた。かつては春になると、自分自身が経験した卒業や入学頃の記憶がよみがえり、切ない気持ちになっていた。親になってからは、子どもたちを通してワクワクするような春を体験させてもらってきた。その子どもたちが今、巣立ちの時を迎えていることが感慨深い。

 この春、旅立ちを迎えるみなさま、おめでとうございます。やわらかな光に包まれ、花の香りを胸いっぱいに吸い込み、自然からの祝福を受けられますように。人と人とが自然に触れ合い、素直に春を喜べる日々が、これからも続いていきますように。