TOP 日日是自然 vol.3
自然とともに生きることの豊かさは、
昔から人々の暮らしの中に息づいてきました。
けれども忙しい日々の中で、その小さな幸せや感動を
見過ごしてしまいがちです。
人生にはどんな日にも意味があり、自然とともにある
暮らしにこそ幸せの種があります。
『日日是自然』は、四季折々の恵みや先人の知恵、
心と体を整える暮らしのヒントを通じて、
日常に自然を取り戻すきっかけになればと願っています。
小さな気づきが、大きなやすらぎにつながりますように。

私を整える『はじまりの調味料』
醤(ひしお)のある暮らし

 暖かな陽光とともに、昼夜の長さがほぼ等しくなる春分がやってきました。自然界のエネルギーが「中庸(バランスが取れた状態)」となるこの時期は、新しい手仕事を始めるのにも適した「始まり」の季節です。そんな芽吹きの季節に、私たちの食卓へ迎え入れたいのが、日本古来の万能調味料「醤(ひしお)」です。

 「醤」という言葉を初めて耳にする方も多いかもしれませんが、実は醤油や味噌の原型とされる存在です。その起源は古く、中国では三千年以上前の周代から記録があり、日本では縄文時代の遺跡かも魚や植物を塩漬けにした「原生的な醤」の痕跡が発見されています。 正式な製法は仏教の伝来とともに伝わり、701年の大宝律令では宮内省の大膳職に「醤院(ひしおつかさ)」という役所が置かれ、組織的に製造・管理されていました。奈良・平安時代には、貴族の食卓で「酢、塩、酒」と並び、料理に各自で味を添える「四種器(よぐさもの)」の一つとして重宝されていた、まさに日本の味の基盤なのです。

 よく似た調味料である「醤油麹」との大きな違いは、使用する「麹の種類」にあります。醤油麹がお米由来の米麹で作られるのに対し、醤は大豆と麦から成る「ひしお麹」を使用します。米麹の甘みとは一線画す、力強いコクと深い「うま味」は、大豆の豊富なタンパク質が、微生物たちの生み出す酵素によってアミノ酸へと分解された「旨味の塊」だからです。

 強力な酵素が食材のタンパク質をあらかじめ分解してくれるため、体内での消化・吸収がスムーズになり、胃腸への負担を軽減します。また、発酵の過程で生まれるオリゴ糖や乳酸菌が腸内環境を整え、ビタミンB群がエネルギー代謝や美肌をサポートしてくれます。

 冬の間に溜まったものを出し、身体をリセットしたい春。酵素の力で消化を助ける醤は、春のデトックスを支える心強い味方となるでしょう。

「ひしお」の仕込み方

【材料】
• ひしお麹 200g
• 醤油 220g(大豆、小麦、塩のみで作られたものがおすすめ)
• 水 110g • 昆布 3~5cm角 1枚

【道具】
• 保存瓶 発酵でガスが出るため、少し余裕のあるサイズを
• 清潔なスプーン

【手順】
1. 煮沸消毒した瓶に、麹、醤油、水、昆布をすべて入れ、スプーンで底からよく混ぜ合わせます。

2. フタを軽く閉め、常温に置きます。1日1回、清潔なスプーンで全体に空気を送り込むように混ぜてください。
2日目あたりで、ひしお麹が水分を吸って表面が乾いてきたら、ひたひたになるまで醤油を足して下さい。

3. 春秋なら10日~14日、夏場なら5日~10日、冬場なら14日~21日ほどで、麹の粒が指でつぶれるほど柔らかくなり、甘い香りがしてきたら完成です。完成後は冷蔵庫で保存します(目安 約4ヶ月)。

【失敗しないコツ】 納豆菌は麹菌よりも非常に強力です。
仕込む日や混ぜる日は「納豆を食べない」こと。

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「厚揚げのひしお薬味のせ」

厚揚げのコクに、ひしおの旨みと薬味の爽やかさがベストマッチ。
おつまみや、あと一品欲しい時に重宝する発酵副菜です。

【材料(2人分)】
・厚揚げ 1枚 ・ひしお 大さじ1 
・薬味(お好みで)刻みネギ、おろし生姜、かつお節など

【作り方】
厚揚げを魚焼きグリルかトースターで、表面がカリッとするまで焼いてから「ひしお」を乗せ、お好みの薬味を乗せるだけの簡単レシピ。

酵素の力で極上仕上げ 「鶏もも肉のひしお漬け焼き」

ひしおに含まれる強力な酵素が、鶏肉を驚くほどしっとりジューシーに。噛むほどに旨みが広がる一皿です。

【材料(2人分)】
・鶏もも肉 1枚(約300g) ・ひしお 大さじ2(肉の重量の約10%)
・みりん 大さじ1(照りと甘みをプラス)

【作り方】
① 鶏肉を一口大に切り、ポリ袋に入れて「ひしお」と「みりん」を加えます。袋の上からよく揉み込みます。

②冷蔵庫で30分〜一晩寝かせます。

③フライパンに油を薄く引き、皮目から弱めの中火で焼きます。
焦げやすいため、蓋をして蒸し焼きにし、最後に裏返して香ばしく焼き上げます。

【おいしさのヒント】
ひしおの粒が焦げやすいので、気になる場合は焼く前に指で軽くタレを拭うと綺麗に焼けます。冷めても柔らかいため、お弁当の主役にも最適です。

ひしお麹はどこで購入できるの?

河村こうじ屋(三重県)「ひしおの素」
【原材料】豆麹・麦麹・米麹
【特徴】米麹の甘みが加わったマイルドな味。

山口こうじ店(福島県)「ひしおの素」
【原材料】豆麹・麦麹・米麹・玄米麹
【特徴】4種の麹による深いコクが魅力。

公式サイトで新発売された「生麹タイプ」
【原材料】豆麹・麦麹・玄米麹
【特徴】 乾燥させていない「生麹」のため、酵素の力が非常に強く、発酵の進みが早いのが最大の特徴。玄米麹由来の奥深いコクと香ばしさが楽しめます。

名刀味噌本舗(岡山県)「ひしおの糀(はな)」
【原材料】豆麹・麦麹
【特徴】米麹なし。伝統的な配合。
麦の香ばしさとキレが楽しめます。

オーサワジャパン「乾燥ひしおこうじ」
【原材料】豆麹・麦麹
【特徴】米麹なし。厳選された原料で、すっきりした旨味が特徴。

※河村こうじ屋のみAmazonでの取り扱いがないため、楽天市場や公式サイトをご確認ください。

 【こちらは令和8年3月現在の情報です。随時更新される可能性があるため、必ず最新の公式情報をご確認ください。】

初めてご購入される場合は、米麹入りタイプの方が甘味がありおすすめです。
麦麹と豆麹のみのタイプは旨みが強く、スッキリした味わいです。

メーカーによって作り方や仕上がり目安の日数が違ってきますが、とろみがつき麹全体が柔らかくなったら食べ頃です。

余ったひしお麹の保存方法は?

1. 冷凍保存(約半年)

乾燥麹は冷凍してもカチカチに凍らず、パラパラのまま保存できます。

元の袋から空気をしっかり押し出して抜き、ジップロックなどの密閉袋に入れ、さらにタッパーに入れるとニオイ移りも防げます。
麹の酵素(分解する力)が休眠状態になり、一番鮮度が保たれます。使う時は解凍不要。 冷凍庫から出してそのまま仕込めます。
2.冷蔵保存(3ヶ月程度の保存)

すぐにまた使う予定がある場合は、冷蔵庫でも大丈夫です。
1. 冷凍と同じく、チャック付き袋などでしっかり密閉します。
2. 冷蔵庫の「野菜室」ではなく、「冷蔵室」に入れてください。

【重要】絶対に避けたいこと
常温放置と濡れた手で触る。水分は腐敗の原因になります。