TOP 日日是自然 vol.2
自然とともに生きることの豊かさは、
昔から人々の暮らしの中に息づいてきました。
けれども忙しい日々の中で、その小さな幸せや感動を
見過ごしてしまいがちです。
人生にはどんな日にも意味があり、自然とともにある
暮らしにこそ幸せの種があります。
『日日是自然』は、四季折々の恵みや先人の知恵、
心と体を整える暮らしのヒントを通じて、
日常に自然を取り戻すきっかけになればと願っています。
小さな気づきが、大きなやすらぎにつながりますように。

衣食住

 若い頃の私は、刹那的に生き、過剰に「非凡」に憧れていた。個性的な人が集う場所に行きたくて、渥美半島の田舎から東京、早稲田大学へ進み、今ではオールドメディアと呼ばれるマスコミを目指した。 人と違うファッションをし、「変わっているね」を褒め言葉として受け取り、自分にしかできない人生を追い求めた。

 家事や料理は得意だったけれど、家庭的な女になるより、男たちに混じって(同化して)何かを成したかった。 好きになる男性も、「三度のメシより音楽(小説、映画)」というクリエイティヴなことに熱中している人だった。テレビ番組のAD、現代美術作家の助手などを経て、小説を書くようになり、最初に書いた小説が大手出版社の新人賞で最終候補作となった。 それを機に実家へ戻り、アルバイトと家事手伝いをしながら小説を書き重ねていた。

 そんなタイミングに紹介されて出会った、結果的に今の夫となる男性は会社員だった。それまでは選んでこなかったタイプの彼から「衣食住を大切にしたい」と聞き、平凡なその夢に頭を打たれた気になった。 会社の保養所に連れて行かれ、平凡に見える家族連れの幸せそうな姿に「豊かな暮らし」というのはこういうものなのかな、と思った。

 結婚に至り、子どもが生まれ、育児のたいへんさを知った時、それまで平凡だと思っていたすべての母親たちを心から尊敬した。 元々子どもを産むことは最大の夢だったけれど、誰でもできるように見えていた結婚生活や育児の中に「非凡」が潜み、当たり前の暮らしこそ難しいと気づかされ、それまでの自分の価値観が変化していった。生き方も夢も多様だけれど、 生きるために必要不可欠な要素を快適にととのえることを、決して軽く見てはいけないと反省した。

 夫が建ててくれた家で子どもたちが育ち、今では成人してそれぞれ一人暮らしをしている。 私は逸脱したイメージを持たれることも多いけれど、家庭第一に過ごし、家庭こそが夢の場であり、家庭こそが戦場だった(もちろんまだ続く)。

 衣も食も住も、華美にならず、「健康」を第一に、あらためてととのえたい。