日日是自然 vol.4 エッセイ 「夏至 」 | 野川建設
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自然とともに生きることの豊かさは、
昔から人々の暮らしの中に息づいてきました。
けれども忙しい日々の中で、その小さな幸せや感動を
見過ごしてしまいがちです。
人生にはどんな日にも意味があり、自然とともにある
暮らしにこそ幸せの種があります。
『日日是自然』は、四季折々の恵みや先人の知恵、
心と体を整える暮らしのヒントを通じて、
日常に自然を取り戻すきっかけになればと願っています。
小さな気づきが、大きなやすらぎにつながりますように。

夏至

夏至と言えば、思い出される一本の映画がある。
その名も『夏至』(2000年公開)という映画で、ベトナム生まれでフランス育ち、映像美に定評があるトラン・アン・ユン監督の作品。
その映画を私にすすめてくれたのは宗教人類学者の植島啓司さんで、まだ子どもが小さかった頃にDVDを借りて観た。
ベトナムの三姉妹の美しい黒髪や日常の風景、湿度の高い空気感、濃い色で映し出される植物や世界遺産のハロン湾が印象的だった。

そのベトナムやハロン湾に昨年行く機会をいただき、念願だった現地の料理を味わうことができた。
ベトナムに住んでいたことのある友達夫婦から食の素晴らしさについて聞いてはいたが、想像以上だった。
例えば「フォー」。ホテルの朝食と、街に繰り出した時にいただいた程度だけれど、スープの味わい深さ(何層もの出汁)に魅了された。

日本の代表的な汁物は味噌汁だが、何気ない日常食のレベルで、その国の国民がどのくらい食を大切に思っているか窺える。
旅をした様々な国で汁物やスープをいただいてきたけれど、ベトナムのスープの味わいから、庶民が食べること、生きることを大切にしているように感じられた。

日本と比べて国民の平均年齢が若く、これから上昇していく国。
貧しさが残るカオスな街や村において、暮らす人々から活気やエネルギー、生命力を感じた。
その源は食べることだろう。映画でのベトナムも、垣間見た実際のベトナムも、暮らしの根を大切にして見えた。

調べてみるとベトナムの食料自給率は100を超えている。対して日本は約38%。自分が感じた両国の違いを、数字でまざまざと見せつけられた思いがした。
日本でも食や農の大切さを見つめ直そうという動きは以前から続いており、近年はその必要性がさらに高まっている。
私自身もせめて実家の田植えを親子で手伝ったり、食や健康について学ぶ会に関わったりしている。

豊かな食は、土地の記憶や季節、人の営みや触れ合いをつないでいくものなのだと思う。
映画『夏至』の静かな風景や、ベトナムで味わった深いスープの味を思い返しながら、自然とともにある暮らしや、日々の食卓を大切にしていきたい。